『カフネ』を読んで心が静かに動いた瞬間
阿部暁子さんの小説『カフネ』を、一気に読みました。
泣きそうになる場面も、考えさせられる描写もたくさんあって、読み終えたあともしばらく余韻が抜けませんでした。
何より心に残ったのは、「人の本当の気持ちは、どれだけ近くにいても見えないことがある」という事実。
そして、それでもなお「分かろうとする気持ち」が、どれほど尊いものかということでした。
この物語の中心には、突然亡くなった弟の存在があります。姉である主人公・薫子にとって、彼は唯一無二の心の支えでした。
誰からも愛され、癒しの存在だった弟。けれど、彼の死後、薫子は彼が内面に大きな葛藤を抱えていたことに気づいていきます。
同性との恋愛、自分の本音を誰にも言えなかったこと、そして孤独の中で苦しんでいた事実・・・
この本の登場人物たちには、介護に追われる妻や、一人で双子を育てる母親、そして重い病気を抱える女性などがいます。
誰もが「見えない苦しみ」を抱えていて、それでも日々を生きている。
その姿が、読みながら胸に沁みました。
「優しさ」は、派手じゃない。でも、とても強い。
そう感じさせてくれる物語でした。
本当の気持ちは、誰にも見えないけれど
本を読みながら、ふと、過去の自分の経験がよみがえりました。
最初の結婚でうまくいかなかった理由は、きっと相手の「本心」を分かろうとする姿勢が足りなかったのかもしれない、そんなふうに思えたんです。
今の夫との関係はとても穏やかだけど、「本音で向き合えているだろうか?」「上部だけで過ごしていないか」と自問することもあります。
そして同時に気づくのは、「実際どれだけ本気で向き合っても、相手のすべてはわからない」ということ。
これは、悲しいことではなく、むしろ人間らしいことなのかもしれません。
自分の中にも、言葉にできない気持ちはたくさんあります。
夫に言えないこと、子どもたちに伝えていないこと。
日々書いているモーニングジャーナルには、そんな言葉たちが静かに積もっていく。
それもまた、自分という人間の一部なのだと思うようになりました。
それでも、そばにいたいと思えるやさしさ
『カフネ』の中で、薫子が出会っていく人々もまた、それぞれに「誰にも言えないもの」を抱えています。
介護に疲れた妻、子育てに奮闘する母親、病気と向き合う若い女性。
彼らは一見すると普通の暮らしをしているように見えるけれど、その内面では静かに苦しみながら、今日を必死に生きています。
そして何より、亡くなった弟の存在が象徴するのは、
「誰にも気づかれないまま、深い孤独を抱えている人がいる」という現実です。
彼の死を通じて、薫子は初めて「分かろうとすること」の大切さに気づいていきます。
「全部はわからなくても、分かろうとし続ける姿勢」が、ほんとうの優しさなんじゃないか、まさに私もそう思います。
たとえ言葉にできなくても、気持ちのすべてを共有できなくても、
誰かを想って、寄り添いたいと思う気持ちがある限り、人はつながっていける。
うちの子どもたちも、やがて親の手の届かない世界へ羽ばたいていく日が来るでしょう。そのとき私は、きっと少しさみしさを感じると思います。
でも同時に、今できる「分かろうとする関わり方」があると信じています。
大切なのは、
「あなたのことを分かりたいと思っているよ」
という思いを、日常のなかで小さく伝えていくことなのかもしれません。
あなたはもうこの小説読みましたか?
まだならぜひ。読んだ方は感じたこと教えてもらえると嬉しいです。


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